横浜の定番観光スポット『港の見える丘公園』を散歩します。
横浜山手エリアの象徴とも言えるこの公園には、どんな魅力が詰まっているのでしょうか。
カメラを片手に、横浜屈指の景色と開港の歴史を巡る「大人の横浜さんぽ」へ出かけてみましょう🚶➡️

みなとみらい線の終着駅「元町・中華街駅」5番出口からスタートしましょう🚶🏻➡️

駅を出ると早速、横浜の観光スポット周遊バス「あかいくつ」を発見!
路面電車をイメージしたレトロ調のデザインが目を引きますね。
フランス橋

100mもないくらい近い場所に「港の見える丘公園」の入口があります。
この入口の上にかかる橋は「フランス橋」と呼ばれ、かつてこの辺りにフランス領事館やフランス軍の駐屯地があったことに因んで名付けられた歩道橋です。

港の見える丘公園の北部は、明治初期から「フランス山」と呼ばれて親しまれていました。
この地とフランスの関わりはとても古く、開港して間もない文久3年(1863年)からフランス軍の駐屯地が置かれたことに始まります。
(幕末・明治初期は攘夷運動や外国人襲撃事件が相次いで発生していたため、フランス人の安全を確保するため居留地の近くに軍を駐屯させていた)
明治に入って徐々に治安が改善されたため、明治8年(1875年)に軍は撤退します。
約12年間もの長きにわたりフランス軍が駐屯していたため、いつしか「フランス山」と呼ばれるようになったのです。
その後、フランス人居留民らの要望を受けて、明治29年(1896年)にフランス領事館とフランス領事官邸が建設されました。
ちなみに、公園の南部には旧イギリス領事公邸(横浜イギリス館)がありますが、そちらはイギリス山とは呼ばれていません。これはイギリス領事公邸が1937年築と比較的新しいため、「山」としての愛称が定着しなかったようです。
では順に名所を巡っていきましょう。
フランス領事館跡
メダリオン(フランス領事館の遺構)

関東大震災により倒壊したフランス領事館の遺構が、フランス橋の橋脚部に埋め込まれて保存されています。
「メダリオン」は領事館の両翼部外壁に取り付けられていた円形の飾りであり、円の中心部に表された「RF」の文字は「Republique Francaise」(フランス共和国)のイニシャルです。
パビリオン・バルタール(フランス領事館の跡地)

かつてフランス領事館があった場所には、明治29年完成当時の写真とともに案内板が設置されています。

フランス領事館はフランス人建築家・サルダの設計により、明治29年(1896年)に完成しましたが、大正12年(1923年)の関東大震災で倒壊しました。
煉瓦造りの優美な洋館であったことが伺えます。
フランス領事館の遺構として残っているものは、先ほど紹介した「メダリオン」のみです。

フランス領事館の跡地は広場になっています。
その広場に建っているスカイブルーの骨組みは、1860年代フランス・パリに建てられ1973年まで100年余り存続したパリ中央市場(レ・アール)の地下の一部です。
設計者の名をとって「パビリオン・バルタール」と称されました。
「パビリオン・バルタール」はフランス領事館の遺構ではありませんが、エッフェル塔より前に建てられた純鋳鉄製構造物として学術的・文化的に貴重な遺産であり、パリ市より横浜市に寄贈され、この地に復元されました。

では、フランス領事館跡地の奥にある階段を使ってフランス山を登っていきましょう!
階段が2つありますが、どちらから上ってもすぐに合流します。
実はこの2つの階段は半円形に湾曲しているのですが、その形はフランス軍駐屯地時代の陣営をイメージして再現されたそうです。
フランス領事官邸遺構

階段を上ったところにある庭園も、フランス軍駐屯地時代の庭園をイメージして整備されたものです。
綺麗に整備されており、ベンチもあって落ち着く場所ですね。

庭園の奥にある建物や風車が「フランス領事官邸」の遺構です。
少しややこしいのですが、フランス山の下に建っていた「フランス領事館」と上に建っていた「フランス領事官邸」は別物です。
- 「領事館」・・・実務的に行政サービスを提供する役場の出張所
- 「領事官邸」・・・領事館の長である領事や総領事の住居または外交の場。領事公邸とも呼ぶ。
今から見るものは「領事官邸」の遺構です↓





蔦が絡まっていて分かりづらいですが、これらの構造物がフランス領事官邸の遺構です。
フランス領事官邸はフランス人建築家・サルダの設計により明治29年(1896年)に完成しましたが、大正12年(1923年)の関東大震災で倒壊しました。(ここまではフランス領事館と同じ)
その後、フランス領事官邸は昭和5年(1930年)にスイス人建築家・ヒンデルの設計により再建されますが、昭和22年(1947年)に不審火で焼失しました。
現存している遺構は、その焼け残った1階部分です。

昭和5年に再建されたフランス領事官邸は、1階部分がコンクリート造、2・3階部分が木造だったそうです。

遺構付近の案内板によると、建物本体で残された遺構は玄関ポーチ・玄関ホール・階段・便所だったようです。
1階のその他の部屋は使用人の部屋や厨房等と思われます。
フランス山の風車

フランス領事官邸遺構の南側には風車が建っています。
この風車は当時から残る遺構ではなく、同時代に使われていた風車の写真をもとにモニュメント(レプリカ)として平成の公園整備時に設置されたものです。
風車の色はフランス国旗のトリコロールカラー(青・白・赤)に塗られており、フランス山を象徴としての演出が施されています。

風車があった場所もこの場所ではなく、この先にあるレンガ造り井戸の遺構が残されている場所でした。
風車は井戸水を汲み揚げるために必要だったのです。
風車の前にあるレンガ造りの基礎は、平成の公園整備に伴う工事の際に出土したもので、4基のうち、2基の基礎が展示されています。
レンガ造り井戸以降

風車遺構から80mほど進んだところにあるレンガ造り井戸の遺構です。
明治29年(1896年)、フランス領事官邸竣工時に上水道が山手まで敷設されていなかったため設置されたものです。
この画像の右端に古いレンガの出っ張りが見えますが、これはかつてこの場所に存在した風車の基礎4基のうちの1つです。(残りの1つは園路の下に保存されている)

水は既に涸れていますが、井戸の深さは約30mもありますので、落とし物をしたらアウトです。
使われているレンガは円形に積むために扇形をしています。
愛の母子像

昭和52年(1977年)9月27日、厚木基地を離陸した米軍機がエンジン火災によって横浜市緑区の住宅街に墜落し、幼い兄弟と母親の3人が亡くなりました。
乗員2人はパラシュートで脱出しましたが、無人となった機体が燃料を積んだまま墜落したのです。
二人のお子様は事故の翌日に亡くなり、全身に大やけどを負ったお母様は、約4年間の闘病の末に亡くなりました。

お母様が生前、海が見たいと願っていたことから、海が見えるこの公園に母子3人が寄り添う姿の銅像が有志の寄付によって建立されました。
また、この事故を題材にした絵本作品『パパ ママ バイバイ』や、それを原作としたアニメ映画が制作され、悲劇が語り継がれています。
展望広場

展望広場には緑の屋根の展望台があります。

「港の見える丘公園」は終戦直後の流行歌『港が見える丘』に由来します。



その名の通り、港が一望できる公園です。

2017年に横浜で開催された「全国都市緑化よこはまフェア」(通称:ガーデンネックレス横浜)の公式マスコット「ガーデンベア」です。
「ガーデンネックレス横浜」は2017年以降、毎年春に開催されています。

港の見える丘公園は、2011年夏に公開されたスタジオジブリの作品『コクリコ坂から』の舞台となりました。
主人公・松崎海が毎朝掲げた「安全な航行を祈る」という意味2枚の国際信号旗が設置されています。

ジブリファンの静かな聖地となっています。
沈床花壇「香りの庭」

公園の中央部にある沈床花壇は低く下がった地形の周りを大きく育ったカイヅカイブキに囲まれており、香りが溜まりやすい環境になっています。

噴水を中心に4つに分かれた花壇には、それぞれ異なるバラの香りのテーマを決めて、テーマに合わせた香りのバラが集められています。
小原型精密日時計

一見すると単なる公園のオブジェに見えますが、「世界で最も正確な日時計作家」として知られる小原銀之助によって考案された小原型精密日時計です。
太陽の動きと地球の自転を肌で感じられるこの精密な「科学のモニュメント」をぜひチェックしてみてください。
大佛次郎記念館

横浜市出身の作家・大佛次郎の業績と生涯を様々な資料で紹介する記念館です。
大佛次郎は代表作「鞍馬天狗」をはじめ、時代小説から現代小説、ノンフィクション、戯曲、エッセイ、童話など幅広いジャンルで執筆活動を行いました。
建物は青いステンドグラス、白い壁、赤いレンガタイルを配し、大佛次郎が愛したフランスの国旗(トリコロール)の3色をイメージしています。

代表作の一つ「霧笛」ゆかりの地に建つ記念館には「ティールーム霧笛」という喫茶室も併設されています。

横浜市イギリス館(旧英国総領事公邸)

横浜市イギリス館は、昭和12年(1937年)に英国総領事公邸として建てられました。
大英帝国の風格とモダンな美しさが融合した気品ある佇まいで、横浜市指定有形文化財に指定されています。

2階の展示室と復元された寝室は無料で一般公開されています。



訪問した12月はクリスマスをテーマとした装飾が施されていました。

当時の英国の生活様式やインテリアの雰囲気、外交の歴史が感じることができます。
バラとカスケードの庭


横浜市イギリス館と山手111番館、大佛次郎記念館に囲まれたすり鉢状の地形を活かして作られた庭園です。


バラの香りに包まれるガゼボは写真を撮る人や物思いにふける人たちの憩いの場になっています。

カスケードを用いた水の演出。静かな水の音が心を落ち着かせてくれます。


ヨーロッパの庭園文化を思わせるような優雅なデザインの噴水。
細かな彫刻がクラシカルな意匠を感じさせます。

噴水を中心に「あかいくつ」周遊バスが旋回していきました。 ちょっとビックリ💦
港の見える丘公園の散歩はここまでです。




近隣には岩崎博物館・横浜外国人墓地や山手の洋館が建ち並ぶ山手本通りもありますが、またの機会に散歩したいと思います。

「港の見える丘公園」の散策はいかがでしたか?
四季折々の花々が見られるこの公園は何度訪れても飽きることのない魅力が詰まっています。
帰りは元町商店街でショッピングや、中華街で食事を楽しむのもいいですね。

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